今の私は、アトピーを「治す」よりも、「うまく付き合うもの」だと考えています。そう思えるようになるまでには、ずいぶん時間がかかりました。振り返ってみると、昔はとにかく「治したい」という気持ちが強くて、今思えば無理をしていたこともいくつかあります。
子どもの頃、父が「海の潮風がアトピーにいいらしい」と、どこかで情報を見つけてきてくれたことがありました。私の家は海の近くではありません。それでも、父は車を出して、何度も海まで連れて行ってくれました。
正直、その頃の私は「良くなっているのかどうか」もよくわからないまま、ただ通っていました。
今思うと、毎回車で移動して、時間も体力も使って、続くはずがなかったと思います。それでも父は、「何か良くなるなら」と、私のためにやってくれていました。あの行動を思い出すと、感謝しかありません。同時に、「治したい」という思いが、家族にどれだけの負担をかけていたのかも、今ならわかります。
もう一つ覚えているのが、「針灸で治す」という話です。皮膚科にいくつも通って、思うような結果が出ず、父が見つけてきた選択肢でした。当時の私は、正直、半信半疑でしたし、皮膚科の先生にも「針灸でアトピーが治るわけないよ」とはっきり言われました。
それでも、費用は決して安くなかったはずです。それでも父は、「何もしないよりは」と思ってくれていたのだと思います。藁をもすがる、という言葉がぴったりな時期でした。
こうして振り返ると、無理をしていたのは私だけではなく、家族も一緒だったのだと感じます。そして、後悔というより、「あの頃はそれしか選べなかったんだな」と思うようになりました。
ただ、今の自分が同じ立場だったら、少し違う選択をすると思います。エビデンスの少ない情報にすぐ飛びつくより、皮膚科の先生とよく相談して、現実的にコントロールする方法を選ぶ。劇的な改善を期待するより、悪化しにくい状態を保つ。その方が、結果的に心も体もラクです。
アトピーは、頑張れば頑張るほど良くなる、という単純なものではありません。無理をすると、かえって疲れてしまったり、失望したりします。私自身、「もっと頑張らなきゃ」と思っていた時期ほど、気持ちが追い込まれていた気がします。
今は、日々のケアや生活習慣を淡々と続けています。保湿剤も、特別なものではなく、「今の自分の肌に合っているか」を基準に選んでいます。もし合わなければ、無理せず変える。そのくらいの距離感が、私には合っていました。肌に触れるものを選ぶときも、成分や使い心地を見ながら、自分の感覚を大切にしています。
この考え方が、すべての人に合うとは思いません。ただ、「無理して何かを続ける」よりも、「続けられることを選ぶ」方が、長い目で見て助けになることもある、というのは、私自身の実感です。
昔の選択を否定する気はありません。あの頃の私と家族は、必死でした。そして、その必死さがあったからこそ、今の考え方にたどり着けたのだと思っています。
もし今、「これで本当にいいのかな」と不安になりながら何かを続けている方がいたら、一度立ち止まってみてもいいのかもしれません。治そうとする気持ちも大切ですが、自分と家族が無理をしすぎていないか。その視点も、同じくらい大切だと、今は思っています。
これは、無理してきた一人の体験談です。正解ではありませんが、同じように悩んでいる誰かの、考え直すきっかけになれば嬉しいです。