子どもの頃、私はよく大人にこう言われていました。
「アトピー? 大丈夫、大人になったら治るよ」
親も先生も、悪気があったわけではありません。
泣きながら掻いている私を安心させたかっただけだと思います。
その言葉を、私は素直に信じていました。
小学生の頃は、包帯やガーゼが日常でした。
体育のあとや汗をかいた日は、決まってかゆみが強くなり、夜は眠れない。
でも、「いつか治る」と思えていたから、どこかで耐えられていた気がします。
中学生、高校生になっても、症状は波がありました。
良くなる時期もあれば、急に悪化する時期もある。
それでも私は、「まだ大人になりきっていないからだ」と、自分なりに納得していました。
社会人になれば、きっと。
大人になったら、本当に治るはず。
そう思いながら、気づけば何年も経っていました。
大人になって気づいたこと
実際には、アトピーは消えませんでした。
ひどい時期ほどではなくなったけれど、「何もなかった」状態にはならない。
その現実に、正直、少しだけがっかりしました。
「話が違うな」と思ったこともあります。
でも、怒りや恨みの気持ちは、不思議とありませんでした。
当時の大人たちは、私を支えたかっただけ。
そう思える年齢になったのだと思います。
治らなかったけど、変わったこと
大人になってから、私は「治す」ことより「付き合う」ことを意識するようになりました。
完璧な肌を目指すより、悪化しにくい生活を選ぶ。
そのほうが、気持ちがずっとラクだったからです。
服の素材を気にしたり、洗剤を見直したり、食事を無理に制限しすぎないようにしたり。
一つひとつは小さな工夫ですが、積み重ねることで、以前ほど振り回されなくなりました。
「治らない=ずっと不幸」ではない。
そう思えるようになったのは、大人になった今だからかもしれません。
あの言葉は、嘘だったのか
今振り返ると、「大人になったら治るよ」という言葉は、
医学的には正確ではなかったのかもしれません。
でも、あの言葉があったから、子どもの私は希望を持てました。
毎日を乗り切るために、必要な言葉だったとも思います。
だから私は、あれを「嘘だった」と言い切る気にはなれません。
少なくとも、誰かをだますための言葉ではなかったからです。
今は、受け入れている
今の私は、アトピーがある自分を、特別だとも不幸だとも思っていません。
ただ、「そういう体質なんだ」と受け入れています。
調子がいい日もあれば、悪い日もある。
それは、誰の体にも起きること。
私の場合、それが肌に出やすいだけなのだと思うようになりました。
同じ言葉を信じてきた人へ
もし今も、「いつか治る」と信じて頑張っている人がいたら、
それはそれで、間違いではないと思います。
ただ、大人になっても症状が残っていたとしても、
それは失敗でも、努力不足でもありません。
これは、私のひとつの体験談です。
誰も何も恨んでいないし、今は受け入れている。
そんな気持ちにたどり着く人もいる、という話でした。