アトピーと人前で肌を見せる勇気

大学生から社会人になった頃、友だちと「どこか旅行に行こう」という話になると、候補に必ず出てくるのが温泉でした。
正直に言うと、私はそのたびに少し気が重くなっていました。アトピーのある肌を、人前で見せること。仲の良い友だち相手でも、やっぱり抵抗はあります。これは今でも完全に消えたわけではありません。

温泉に入ること自体が嫌いなわけではないし、体が温まるのは気持ちいい。でも「見られるかもしれない」「何か言われるかもしれない」と考えてしまって、心のどこかでブレーキがかかっていました。結局、理由をつけて断ったり、部屋風呂がある宿を探したり。今思えば、かなり気を張っていた気がします。

そんな私の考え方が少し変わった出来事があります。
親戚が集まって旅行に行ったときのことです。親戚の中に、小学校低学年くらいの子どもがいて、「一緒にお風呂入ろうよ」と声をかけられました。子どもに対して「ちょっと…」と断るのも変だな、と思って、一緒に入ることにしました。

内心はドキドキでした。肌を見て何か言われるんじゃないか、びっくりされるんじゃないか、と。でも、結果は拍子抜けするほど何も起きませんでした。その子は、私の肌のことには一切触れず、ただ「お湯あったかいね」とか、「泳いでいい?」とか、楽しそうにしているだけでした。

そのとき、はっとしました。
ああ、私がこんなに気にしているのは、自分だけなのかもしれない、と。

もちろん、誰もが何も感じないわけではないと思います。でも少なくとも、「他人は自分が思うほど、他人の体を見ていない」ということを、身をもって知りました。特に子どもは、良くも悪くもシンプルで、必要以上に人をジャッジしません。

それ以来、「自分で壁を作りすぎるのはやめよう」と思うようになりました。
無理に人前に出る必要はないし、嫌なときは避けてもいい。でも、「どうせ見られる」「どうせ嫌がられる」と決めつけて、最初から自分を閉じ込めてしまうのは、少しもったいない気がしたのです。

今でも温泉は得意ではありません。でも、「絶対に無理」ではなくなりました。状況や相手次第で、「行ってもいいかな」と思えることもあります。これは私にとって、かなり大きな変化です。

アトピーがあると、どうしても「人前で肌を見せる勇気」が必要な場面があります。その勇気は、一気に持てるものではないと思います。私も、たった一つの体験で、少しだけ考え方が変わっただけです。

もし、温泉やプール、更衣室などで悩んでいる人がいたら、「他人は思っているほど見ていないかもしれない」という、この経験だけ、そっと頭の片隅に置いてもらえたら嬉しいです。
無理はしなくていい。でも、自分で作った壁を、少しだけ低くしてみる。それだけで、世界は少しラクになる気がしています。